現場の看護師に聞いてみた!「憩」の透析患者ケア
Jin 1号でご紹介した、社会医療法人至仁会が運営する「有料老人ホーム 憩(いこい)」。今回は、看護サービスにて同施設の入居者と関わっている看護師の礒野さんに、透析患者のケアを中心にお話を伺いました。
看護サービスで入居者の生活全般をケア
新保:始めに「憩」の入居者さまが受けられる看護サービスは、どのようなものでしょうか?
礒野:私たちが行なっている看護サービスは、その利用者さまが「憩」で安心して暮らせるように生活環境を整えるものです。年中無休で対応しており、医療行為だけでなく、食べること、眠ること、排泄に関してもケアしています。また、利用者さまの体調急変時には、私たち看護師が応急手当をして、病院へ搬送するかを判断します。
新保:そうなんですね。1日の流れを簡単に教えていただけますか?
礒野:はい。朝一番に各フロアをまわり、体調が悪い方がいないかどうかを確認します。その情報をもとに、8時50分からのミーティングで、その日の動き方をスタッフ全員でシェアします。午前中に行うのは、体温や血圧などのバイタルチェック、圏央所沢病院の透析センターや、介護老人保険施設 遊(ゆう)のデイケアへの送り出しです。午前の段階で、利用者さまの体調が大体把握できます。
午後も透析センターへの送り出しがあり、火・金曜日には医師の往診をサポートします。そのほか、透析やデイサービスから戻ってくる方々のお迎え、配薬なども進めます。また、各フロアのスタッフの問い合わせにも随時回答します。もちろん、午前午後を問わず、体調が悪い方のケアが最優先です。そして、少し手が空いた時に書類の作成などを行なっています。

透析患者に対する「憩」のケア体制
新保:次に「憩」の透析患者さまに対する取り組みを教えてください。まず、食事や水分、薬の管理に関してはいかがでしょうか?
礒野:入居者さまの食事の際、看護師は出来る限りその様子を見ています。特に食べ物に好き嫌いがある方は、栄養が偏ってしまう心配があります。「全部食べなくても大丈夫だから、味見して感想を聞かせてほしいな」と食事を促すこともありますね。透析患者さまには食事でしっかりと栄養を取っていただきたいので、食事が楽しめるような雰囲気作りも大切です。
さらに、透析患者さまは担当医が処方した薬を服用する必要があります。そのため、介護担当者も看護師も、薬のチェックを行います。ダブルチェックを行うことで、薬の飲み忘れというミスを防げるのが大きなメリットです。
新保:透析患者さまご自身でいろいろ管理するのは本当に難しいですよね。排便に関してはどうでしょうか?
礒野:透析患者さまは水分をコントロールしているので、便秘になる方が少なくありません。「憩」のスタッフに、その患者さまの食事や水分摂取量などを確認した上で、ご本人の話を聞きながら一緒に軽い運動などを行い、排便を促してみます。その結果次第で、下剤を使用するかどうか、私たち看護師が判断するという感じですね。
新保:病院ではあまり見られないようなケアですね。透析患者さまにとっては、シャントの管理も大切になりますよね。
礒野:はい。ご自身でシャントの管理ができれば理想的なのですが、高齢の方にそれをお願いするのは難しいという現実があります。そのため、私たち看護師が血管の触診や聴診器で血流の音を聞くことで、トラブルを早期発見するよう心掛けています。過去に病院の手術室で仕事をしていた経験などが、透析患者さまの血管の状態を見極めるのに役だっているんですよ。
『透析ノート』で情報を共有
新保:そうなのですね。ほかにも気を付けていることはありますか?
礒野:日々の透析に対して、不安を感じている患者さまもいらっしゃいます。それを少しでも軽減できるように、会話などで気が緩む瞬間を作れると良いなと考えています。透析の送り出しで、麻酔テープを張る際の触診や会話を大切にしています。また、お迎えの際も「気分はどうですか?」と必ず声を掛けます。
新保:透析センターとの情報共有は、どのようにしていますか?
礒野:その日の血圧や体温など、体調に関することを『透析ノート』に記載して、患者さんの情報を共有しています。出血が止まらないなどの緊急時には、透析センターと電話でやりとりして、医師の指示をもとに処置しています。さらに週1回ほど、透析センターの臨床工学技士(ME)と直接話せるので、ノートに書ききれなかった情報のやりとりをしたり、頼みごとをしたり、されたりしています。
「憩」には医療機器が揃っていないものの、透析センターを併設する病院が隣接しているので、入居者さまだけでなく訪問看護師にとっても、心強い環境です。院内では同法人の医師や、先輩・同僚・後輩の看護師が対応してくれるのでコミュニケーションも取りやすく、“透析患者さまのバックアップ体制が整った老人ホーム”と言えますね。
新保:今回は現場の声を伺えたので、「憩」の透析患者さまのケアについて、具体的に知ることができました。ありがとうございました!
