ゆとりある介護を目指す「遊」、透析患者の受け入れ体制も整う!
『心と体に遊びを!』をモットーにする「介護老人保険施設 遊(ゆう)」。今回は、2012年の開設当初から「遊」で介護に携わり、現在は管理者を務める田代さんに、人工透析を受けている入所者さんのお話を中心に伺いました。
心にゆとりを持って介護する
新保:まず、介護担当者の目線で「遊」の特徴を教えてください。
田代:当施設は要介護の認定を受けた方の入所のほか、要支援の方も利用できる通所リハビリテーション(デイケア)などのサービスを提供しています。現在は約130人の方が通所、80人の方が入所で利用しています。施設名の「遊」という文字には「ゆとり」という意味もあり、利用者さまだけでなくスタッフ側も、心にゆとりを持てる状態を目指しています。
新保:以前、田代さんが「走らない介護」を提案していると聞いたことがあります。
田代:「遊」の前に勤めていたグループホームでは、利用者さまのペースに合わせることが大切だと教わりました。グループホームと当施設を一緒くたにできないのですが、介護スタッフが小走りで移動していたら、利用者さまが声をかけにくいですよね。せわしない雰囲気は、誰のためにもならないと思うのです。
新保:なるほど。現在、入所の介護スタッフは何人いますか?
田代:8人のチームが4つあるので、介護スタッフの人数は32人になります。入所スペースはユニットという単位で区切られ、1チームが2ユニットの入所者さまを24時間ケアする体制になっています。
透析患者も安心できる老健に
新保:全国的にみても、透析に通う方が入所できる介護老人保険施設(以下、老健)は少ないですよね。
田代:そうですね。圏央所沢病院の透析科が2018年に透析センターとして新棟へ移動する前から、同院に透析で通われていた患者さまが老健への入所を望まれた際、受け入れていたという記憶があります。入所者さまは入れ替わりますが、平均3〜4人の透析患者さまが入所していますね。
当施設に入所して同院の透析センターへ通う場合は、介護や看護のスタッフが、居室から玄関までの移動をお手伝いし、送迎車を利用して透析を受けることができます。一方、ほかの病院で透析を受ける場合は、週3回ご家族が送迎するか、介護タクシーの手配が必要になりますので、その負担は大きいと言えます。
新保:透析を受けている入所者さまの介護で気をつけていることは?
田代:透析は予約制で時間厳守なのですが、透析に出かける直前にお通じがあったりすると、それも欠かせないので、私たちは急いでおむつ替えをします。また、透析患者さまは水分や塩分を制限しなければならず、基本的に味噌汁などはNGなので、提供するお食事に間違いがないか注視しています。
制限ある生活の中に楽しみを
新保:それは大切ですね。透析患者さまもイベントなどに参加して気分転換されていますか?
田代:はい。コロナ禍は大人数が集まるイベントや、ご家族との面会は中止されたのですが、そういったことが徐々に復活しています。春に行われる「イチゴ狩り」のイベントでは、透析患者さまは普段なかなか口にできないフレッシュな果物を、医師の管理のもと楽しむことができるので好評です。
新保:透析患者さまはカリウムの摂取量にも注意が必要ですからね。透析センターとの連携はいかがですか?
田代:基本的には透析ノートでやりとりしています。各透析患者さまの脈拍数や血圧、体温などのバイタルのほか、排便に関することなど特記事項があればふせんを付けるなどして、透析センターの担当者と情報交換しています。さらに、月1回程度のミーティングもあります。
新しい技術も活用していく
新保:これは透析患者さまに限った話ではないのですが、入所者さまのベッドに「眠りSCAN(スキャン)」というセンサーを導入しましたよね。マットレスの下にセンサーを入れると、ベッドで寝ているのか起きているのか、さらに呼吸数や心拍数がモニターやアプリで確認できるものだったと思います。導入から10か月ほど経ちましたがいかがですか?
田代:特に夜間はスタッフが少ないので、巡回の回数を半分にできて助かっています。巡回時の光や音で起きてしまう入所者さまの、睡眠を妨げることも減りました。また、認知症の入所者さまがベッドから離れたタイミングもわかるので対応しやすくなりました。
今後も介護の需要が高まりますが、十分なスタッフを確保するのが難しいという現状。そのなかで、新しい技術やシステムを導入することは必要不可欠です。すべての入所者さまが安心して過ごせる施設でありつづけるために、さまざまなものを取り入れていきたいと思います。