患者さんが安心して透析を受けられる療養病棟に
開設から4年目になる圏央所沢病院の療養病棟。9割以上の患者さんが日々の透析を必要とする方である、という特徴があります。今回は、同病棟の看護師のリーダである橋本さんに、日々の取り組みを中心にお話を伺いました。

病棟はとても和やかな雰囲気
新保:療養病棟ではどのような看護が必要ですか?
橋本:こちらの病棟は長期にわたり入院される患者さまが多いので、必要な看護を行うだけでなく、患者さまの生活に寄り添い、ある程度の時間をかけて関係性を築いていきます。ご存じのように、透析を受けている患者さまは水分や食事などに制限があるので、いろいろ我慢していただくことが多いのです。「これはダメ、あれもダメ」と禁止事項ばかりだと、患者さまにとって居心地の悪い場所になってしまいます。そうならないように、看護師を含め病棟のスタッフは、患者さまから信頼してもらえる存在になれるよう努力して、さまざまなお願いをするようにしています。さらに「長生きしていただきたいから」という気持ちも伝えるようにしていますね。
新保:なるほど。当院の療養病棟の特徴は?
橋本:看護師は透析や治療に関する業務が多いので、看護助手さんのケアもあって成り立っています。また、季節ごとの飾り付けや、患者さまと日常の会話などを楽しむように心掛けているので、とてもアットホームな雰囲気です。一時的に療養病棟に移ってこられた患者さまから「和やかに過ごせるので、気持ちが前向きになった」という声をいただいたこともあります。さらに最近は、当法人が運営する日本語学校に通うベトナム人学生や、同校の卒業生も介護業務に加わることがあります。彼らは日本語の向上も目指していて、気持ちにゆとりのある患者さまは、彼らに日本語を教えてくれたりします。そういった、お互いに助け合う雰囲気もプラスになっていると感じますね。
新保:それは良いですね。この数年のコロナ禍の影響は?
橋本:基礎疾患のある患者さまがほとんどである療養病棟では、オンラインや窓越しにご家族と会えるものの、直接会えない日々が続いているので、患者さまのストレスになっているのが事実。例えば車いすで移動できる患者さまの場合、短時間でも病棟内で眺めの良い場所へ一緒に行くなど、気分転換を大切にしています。

透析中心のスケジュール
新保:日常の看護について、簡単に教えてください。
橋本:日勤の場合は、8時半スタートです。まず、受け持ちの患者さんの情報収集を行い、その後に、病棟にいる方のバイタルチェックやおむつ交換など個別の処置、さらに昼食の準備や配薬の確認など。13時前後に午前に透析を行なった方が戻ってこられるので、そのお迎えと、再度昼食や配薬などを行います。13時半ごろから、午後に透析を行う方の送り出しも並行して始まり、午前中に透析を行なった方の観察や処置などもします。そして17時ごろから午後に透析を行なった方のお迎え、さらに透析センターから紙でいただく情報を全員分確認。日勤の場合は、ひとりの看護師が8〜9人の患者さまを担当します。夜勤の場合は基本的に16時半スタートです。夜勤の看護師は約30人の患者さまの状態を把握して、内服や点滴の管理、経管栄養の投与など夜間の看護に責任を持ちます。夜勤の最後の仕事は、午前に透析を行う方を8時30分に透析室へお連れすることです。また、早番や遅番というシフトもあり、日勤と夜勤が入れ替わる時間帯の業務を補完します。
新保:看護体制も、透析を中心に動く印象ですね。
橋本:はい。なかでも、透析患者さまのシャントの管理は重要です。シャントに不具合があると透析が行えなくなるので、患者さまの命に関わる問題となります。また、透析患者さまは、足の色が急に変わったり、帯状疱疹が出たりすることがあるので、皮ふもよく診ていますね。

透析センターとの連携も良好!
新保:透析センターとの連携はいかがですか?
橋本:4年を経て、病棟スタッフ全員の透析に関する知識も深まり、患者さまの健康管理は以前よりもスムーズにできるようになりました。透析センターにいた看護師がこちらの病棟へ異動になった際、さまざまな情報も入ってくるのがその一因だと思います。また、透析センターと療養病棟間は風通しが良いと言えます。最近は月2回程度、カンファレンスが開催され、MEや看護師のリーダーが集まって情報を交換しています。患者さま一人ひとりの数値に変化があった時、医師から指示があった時などの連絡が、より密になっている印象もあります。
新保:それでは、最後にひとことお願いします。
橋本:はい。療養病棟の透析患者さまの看護は、正直なところ難しい面もありますが、「ここなら安心して療養できる」と患者さまに言っていただける病棟になるよう、今後も尽力していきたいと思います。