安心して楽しめる食事を、元気の源にしてほしい!
社会医療法人至仁会が運営する「有料老人ホーム 憩(いこい)」は、人工透析が必要な方の入居に対応できます。そして透析患者さんにも、健康な方が食べているメニュー(常食)に近い食事を提供しています。そんな「憩」の食事について、調理を担当している栄養士・渡邊さんに、至仁会の理学療法士・新保さんがお話を聞きました。
「憩」の日々の食事を支えるスタッフ
新保:渡邊さんはいつから「憩」で調理を担当していますか?
渡邊:2021年の12月中旬からです。前職では保育園や学校の給食、および高齢者施設の食事を提供する事業所の人員や衛生面などを管理する仕事だったので、さほど調理に携わっていなかったのですが、当施設では調理を中心に行っています。
新保:どのような体制で、何人分の食事を用意しているのですか?
渡邊:私を含めた栄養士が2人と調理師1人、そのほかパートさん等が5人いて、シフト制で調理しています。基本的には、毎日57人分の朝食や夕食を用意し、昼食やおやつはデイサービスなどで外出されている入居者さまの分をのぞいた数になります。
新保:調理場が稼働している時間はどのくらいになりますか?
渡邊:朝5時から朝食の準備がはじまり、調理のほか配膳や片付けなどもありますので、夕食の片付けが終わるのは19時半ごろです。朝食と夕食はクックチルシステムで冷凍保存した料理を温め直して提供するものが多く、昼食はできるだけ手作りしています。
「特別メニュー」とは?
新保:なるほど。そのなかでも「特別メニュー」が好評だと聞きました。
渡邊:はい。あまり外出できない入居者さまにも旅行気分を味わってもらいたいという思いから、郷土料理や世界各国の料理を中心としたメニューを用意します。それが「特別メニュー」で、月2回、日曜日に提供しています。出身地の郷土料理が出てくると「懐かしい」という入居者さまもいますね。
新保:最近の「特別メニュー」は?
渡邊:イタリア料理でした。シーフードたっぷりのトマトソースをかけたスパゲティ(ペスカトーレ)や、イタリアン・ミートボール、ティラミスなどを用意しました。デザートのティラミスは、女性だけでなく男性の入居者さまにも喜んでいただけたようです。
新保:日々のおやつは?
渡邊:プリンやゼリー、ケーキ、まんじゅうなどさまざまで、これも楽しみにしている入居者さまが多いです。おやつにも特別な日があり、デコレーションケーキやミルクレープなどを準備することがあります。
食事を楽しみながら栄養を取れるように
新保:入居者さまからリクエストを受けることもあるのですか?
渡邊:片付けの際に「今日のスープはおいしかった」という声を耳にしたり、好きな食べ物の話を聞いたりすることがあり、そういった情報を参考にしながら、栄養のバランスを考えてメニューを検討します。また、彩りや食感なども大切なので、生野菜やフルーツをプラスするようにしています。
リクエストではありませんが、秩父の郷土料理として知られる「わらじカツ(豚肉を薄く大きくのばして、衣をつけて揚げる料理)」を出した時は、その大きさに反響がありました。手間暇をかけて作ったものが喜ばれると、素直にうれしいです。
新保:食事の残量からメニューを調整することはありますか?
渡邊:食事を残された方は、十分な栄養が取れていない可能性もありますので、当施設の看護師や介護担当者が日々の食事の残量を記録して、随時対応しています。
毎回の食事をベストなものにする!
新保:現在「憩」には10人弱の透析患者さまが入居されていますが、透析食を用意するのですか?
渡邊:透析患者さまには水分量や塩分、リン、カリウムなどに制限があるのですが、当施設では可能な限り常食に近いものを提供しています。例えば、生野菜は水に30分以上さらしてから使用し、味噌汁の代わりにフルーツの缶詰をそえます。透析患者さまに限らず、白米やおかゆの量なども、各入居者さまの体調に合わせて調整します。
誰でも高齢になると病気等のリスクが上がり、明日から常食が取れなくなるということも、残念ながらありえます。私たち調理スタッフは、そういったことを常に心に留め、毎日の食事の盛り付けや味付けなどにこだわり、ベストを尽くすようにしています。
新保:高齢者医療に関わる者として、身の引き締まるお話です。ありがとうございました。