治療に欠かせない『医薬品』の専門家集団
院内で使用する薬に責任を持つ
―薬剤科の主な仕事を挙げてください。
当科では入院調剤や注射調剤のほか、服薬指導、薬剤情報提供、医薬品の管理や情報収集など、薬に関するさまざまな業務を担っています。
―まず、入院調剤や注射調剤について教えてください。
患者さまに処方する薬には絶対にミスがあってはならないので、薬の種類に問題はないか、適切な量であるか、組み合わせに問題はないか、などを念入りにチェックします。また、用意したものがきちんと服用されているか、安全に投与されているかも確認します。
―服薬指導は、薬剤師が直接行うのですか?
はい。私たち薬剤師が安全な薬物治療を行っています。調剤や医薬品管理は「対物業務」になり、指導や情報提供などは「対人業務」になりますね。ちなみに当科の新人薬剤師は、最初の半年間に対物業務を中心に覚え、徐々に対人業務にも携わっていくスケジュールとなっています。
薬剤情報提供に関しては、新薬の発売や、既存の薬の情報が更新されたタイミングなどに当院の医療従事者向けに行います。私たち薬剤師の情報収集は、病院に来訪する製薬会社のMR(医薬情報担当者)さんから得ることもありますが、ネット上でその資料を読んだり、説明会に参加したり、オンラインで行われるケースが増えています。
チーム医療の一員として尽力
―次に、現在の薬剤科の体制は?
当院は救急病院なので、薬剤師も24時間体制でシフトを組み、常時対応できる状態です。新人の薬剤師は、1年くらい経つと院内の業務をひと通りこなせるようになるので、そこからシフトに加わってもらいます。
―圏央所沢病院の特徴はありますか?
脳卒中で入院する患者さまが多い病院なので、脳神経外科で使用する、いわゆる「血液をサラサラにする薬(抗血小板薬や抗凝固薬など)」を扱うことがよくあります。さらに、透析センターも併設していますので、透析患者さまに対しての薬の投与量や投与スケジュールが適性かを判断して、必要に応じて医師に提案することもありますね。
また、当院はカンファレンスが多いのも特徴だと思います。患者さまの症例について、医師を含めた多職種と意見交換や情報共有がしやすいので、臨床知識を深めやすい環境です。私は前職で、チェーン展開している調剤薬局に勤めていましたが、そこでは処方せんを見て診断や治療方針を推測するのみでした。
―圏央所沢病院ではどのような相談を受けますか?
例えば、リハビリを担当する言語聴覚士から「嚥下(えんげ)がうまくいかない患者さまがいるので、錠剤を砕いてもよいか?」という質問がありました。なかには砕いてはいけない錠剤もあるので、状況を把握してから回答しました。そのほか、患者さまの医療費を軽減したいので別の薬に変えられないか、という相談もありますね。
患者さんのために、仕事は正確に!
―仕事のやりがいは?
私の場合は、対人業務でやりがいを感じることが多いです。以前、糖尿病で入院していた患者さまが、帰宅後は毎日ご自身でインスリン注射を打たなければならない状態に。そこで私が注射の打ち方などをお伝えしたのですが、初めは怖がって打てませんでした。焦らずにご指導を続け、できるようになった時に「ありがとう」と感謝され、とてもうれしかったです。
また、薬剤師の重要な役割は、ミスを発見することです。この仕事を始めた時に、先輩から「処方せんには必ず間違いがあると思って見たほうがいい」と言われました。もちろん、間違いがない場合がほとんどなのですが、処方する薬の内容に少しでも疑問があれば、医師に確認する必要があります。それは患者さまのためです。
―それは心強いですね。最後にメッセージをお願いします。
薬やサプリメント、健康食品などには、組み合わせによって相性が悪いこともあります。少しでも不安があれば、ご自身で判断せずに薬剤師を頼ってください!
―本日はいろいろお話いただき、ありがとうございました。
2023年3月、圏央所沢病院にて。