多様な医療に携わった経験を、健診センターで生かす

多様な医療に携わった経験を、健診センターで生かす

今回は圏央所沢病院の健診センター長である阿野優子(あの・ゆうこ)先生の紹介です。2024年6月から同センターで問診を担当しています。これまで、いくつかの病院で麻酔科医として勤務し、日本人間ドック学会の認定医として予防医療、さらに在宅医療にも関わってきた先生です。

家を出たい思いで医学部へ

ー出身地や子どもの頃について教えてください。

ー私は長崎県出身で、長崎市の隣りにある長与町で育ちました。大村湾に面した自然豊かな土地で、特産品はミカンですね。両親は共に教員で、私は高校まで地元の学校に通っていました。趣味は編み物や刺繍で、家にいるのが好きな子どもでした。小・中学校の先生たちはほとんど親の知り合いだったので、少々プレッシャーを感じる環境でした。私が「大学は外に出たい」と言ったら、親は「九州か山口県の国立大学、そして医学部ならOK」と言いました。受験勉強を猛烈がんばって、山口大学の医学部に合格。医学部に入学したのは、そういう理由です(笑)

ー大学時代はいかがでしたか?

ー運動が苦手な私でも体を動かせる弓道部に所属し、九州・山口エリアの医学部生の大会で個人戦3位という成績を残せました。大学3年あたりまではの楽しく過ごせたのですが、4年生になり「私は本当に医者になりたいのか?」と考え込むようになり、学校へ行くことも億劫に…いわゆるアイデンティティ・クライシスですね。なんとか5年生になり、地元の友だちが社会人になって自活している姿を見て「私もあと2年がんばって医師になろう」と決意。また手に職を持っていた母を見て育ったので、自分にもその願望があったのかなと。

麻酔科医になり、東京へ

ー麻酔医として活躍されていたのですよね。

ー医師免許取得後は、同大学の附属病院で研修医になりました。始めは外科を希望していたのですが、まだ女医が外科医になるのは厳しかった時代。「外科に女性の更衣室はない」と言われたこともあります。しかし、手術に関わりたかったので麻酔科を選択。麻酔科医としての仕事は想像以上に興味深く、毎日が充実していました。2年ほどで麻酔科標榜医の資格を取得でき、結婚するタイミングで相手の地元である東京へ。府中市にある都立神経病院で勤務しました。2人の子どもに恵まれ、ベビーシッターさんに頼りながら働いていたのですが、夫婦関係はうまくいきませんでした。当時の夫も医師だったので忙しく、義理の父母も自営業の方で時間にゆとりがなく、離婚して長崎へ戻ることにしました。

長崎と岐阜で、仕事と子育てを両立

ー子育てしながら医師の仕事は大変ですよね。

ーそうですね。長崎の病院でも麻酔科医として勤務しましたが、そこの上司も子育てに理解がなく、仕事を続けることが困難に。隣町にある同院の健診センターで医師を探しており、声がかかったので移りました。そこでは、麻酔科でさまざまな患者さんを診ていた経験が役立ちました。さらに、婦人科検診に対応するため、勉強して子宮がん検診やマンモグラフィを用いた乳がん検診等の資格を取得。長崎で10年ほど経った頃、仕事にやりがいを感じていたものの、子どもは中・高校生になっており、週末は部活動の送迎などで自分の時間が全くない状況が続き、少々苦しい時期を過ごしました。

ーその時はどうされたのですか?

ー下の子が高校を卒業して大学へ進学する時に、岐阜県で在宅医療のクリニックを開業していた知人から連絡があったので、新たな分野に挑戦してみることにしました。「病院ではこれ以上よくなる治療ができません」と言われる患者さんが想像以上にいたし、在宅医療にも関心がありました。

岐阜では、親子が同じ敷地内で生活しているケースが今も多く、医療が必要になった高齢の方を、施設ではなく自宅で家族が支えるのが一般的。その患者さんたちは、家で穏やかに最後を迎えたい人が多かったように思います。また、そのクリニックはほかの先生やスタッフのサポートが手厚かったので、仕事がしやすかったです。

ーしかし、また転機が訪れるのですね。

ーはい。在宅医療の仕事に慣れてやりがいを感じるようになった頃に、コロナが流行し始めてクリニックでの外来の仕事が減り、さらに自身の目の病気で車の運転が難しくなってしまったのです。運転しなくてもよい場所といえば、都会。東京で就職して結婚した娘から「こっちに来たら?」と言ってもらえたので、また東京へ。そして当院の健診センターで働く機会を得ました。

健診・人間ドックで病気を未然に防ぐ

ーそれでは最後に、今後の目標をお願いします。

ー当院は、健診や人間ドックを受ける方一人ひとりとじっくり話しができる恵まれた環境です。現在「動脈硬化チェックコース」という新たな健診コースが立ち上がり、脳や心臓などの病気を早期発見、または未然に防げるよう取り組んでいます。ほかにも、放射線科のスタッフと協力して新しい健診コースを企画しています。多くの方は、40代後半あたりから健診で気になる項目が出始めます。成人病や生活習慣病ともいわれる脳卒中や心筋梗塞、高血圧症、肝臓病や糖尿病、高脂血症などは、自覚症状がないまま進行することも。定期的な健診で、そういった病気のリスクを下げましょう。

ー本日はいろいろお話いただき、ありがとうございました。

2024年9月、圏央所沢病院にて

RECRUIT

  • やりたいことがそこにある。
    なりたい自分がそこにいる。

  • 5年後の自分を、10年後の自分を想像できるか?
    今やるべきことを、しっかりと、一歩づつ。

  • 稼ぐためにではなく、
    学ぶために働く。

  • 欠点に目を背けるか、
    弱点を「強み」に変えるのか。

  • 失敗しない道を選ぶのか、
    失敗から何かを学べるか。