住み慣れた地域でずっと生活できるようなケアを
今回は圏央所沢病院の新棟3階にある「地域包括ケア病棟」をご紹介します。同病棟は、2022年5月から患者受け入れの準備が始まり、同年の11月、正式に開設されました。準備段階から現在まで同病棟の看護師長を務める川村さんにお話を伺いました。
さまざまな疾患の患者さまを受け入れる
―まず、地域包括ケア病棟とはどのような病棟なのでしょうか?
―急性期医療を受けていた患者さまの中で、まだ症状に不安がある方や、退院調整が必要な方を受け入れ、在宅復帰を目指す病棟です。そのほか、在宅で療養している方が肺炎や尿路感染等で治療が必要になった場合、在宅でご家族等が面倒をみることが一時的に難しくなった場合も、当病棟へ入院していただくことがあります。
地域包括ケア病棟への入院は、長くても60日という上限がありまして、当院での目安は約1カ月です。そして、当病棟を退院する患者さまの約8割は、ご自宅または在宅系の施設に戻られています。また、患者さまの年齢に制限はないのですが、80代の方が8割を占めています。
―なるほど。回復期リハビリテーション病棟と似ている気がします。
―大きな違いは、回復期リハビリテーション病棟は脳梗塞や脳出血など対象となる疾患が定められており、機能回復を目指すリハビリが行われます。一方、地域包括ケア病棟は疾患が限定されておらず、治療および在宅復帰を目指すリハビリが行われます。
可能な範囲で手厚い看護をしたい
―そうなんですね。つぎに、病棟の体制を教えてください。
―はい。当院の地域包括ケア病棟の病床数は26床で、この1年間は20人前後の患者さまで推移しています。担当看護師は約20人、そのほか看護助手が2人、アルバイトが8人ほど、専従の理学療法士もいます。現在の看護体制は13対1で、ルーティン的な業務はほかの病棟と同様です。
―病棟の特徴があれば教えてください。
―数値的なもので比較した訳ではないのですが、当院の場合は治療が必要な患者さまが多めであるように感じます。そのため、ケアに関しても医療行為が必要になりますので、地域包括ケア病棟としては看護師の数が多いのかなと思います。
在宅療養へ移行していただくために
また、基本的にはプライマリーナーシングで、各患者さまに1人の担当看護師がいるのですが、日勤・夜勤・平日休みもあるシフト制で勤務している看護師には、対応しきれない日があります。そのため、日勤のみのシフトで入っている看護師は「退院支援看護師」としてサポートしてもらっています。患者さまのことを一生懸命考える、優しいスタッフが揃っているので、チームワーク良さも特色に挙げたいですね。
当病棟の看護師は、担当する患者さまの退院の調整も行っており、ご家族やケアマネージャーさんと連携するという役割も担っています。訪問看護師やケアマネージャーさんなど病院の外で働く方と協同したことのない看護師が少なくなかったのですが、徐々にそういった業務に慣れてきたように感じます。また、当院の地域連携室にもいろいろ教えてもらいました。
―ほかにも特徴や特色はありますか?
―日々のカンファレンス(スタッフ同士の意見交換)は、リーダーが中心となって進める形ではなく、各患者さまの担当看護師がそれぞれ評価を行い、ほかの看護師の意見を聞くという形をとっています。週2回の退院調整カンファレンスでは、参加者全員で各患者さまの情報を共有して、退院に向けた方向性を検討します。
患者さんだけでなく、ご家族にも寄り添う
―最後に、今後の目標などを教えてください。
―はい。当院の急性期一般病棟では、認知症の患者さまが徘徊すると転倒して骨折する可能性が高かったり、点滴などのチューブを抜いてしまう危険性があったりする場合、それを抑制することがあるのですが、こちらの病棟では基本的に抑制をしません。しかし、当病棟でも同じ危険性がありますので、今後も注意深く見守っていきます。
さらに、当病棟では患者さまのADL(日常生活動作)のレベルを上げることが大きな目標になっています。認知症の患者さま等には、なかなかハードルが高いことなのですが、みんなで話し合い、患者さま本人だけでなく、そのご家族にもよい形を考えていきたいです。
―本日はいろいろお話しいただき、ありがとうございました。
2023年11月、圏央所沢病院にて。