重症患者のケア、そして命と向き合う病棟
予断を許さない病状の患者を看護する
―まず、4階の体制はどのようになっていますか?
―当病棟には50床あり、患者さま7人に対して看護師1人という看護体制です。看護師は約40人、私たちをサポートしてくれる看護要員を含めると約50人で日々患者さまをケアしています。また、当病棟の患者さまの平均在日数は15日前後です。
―1日の流れを簡単に教えてください。
―はい。毎朝8時45分からショート・カンファレンスを行い、ベッド数の状況や、その日に予定されている手術などの予定を確認します。当病棟は、脳卒中専門の治療室であるSCUの後方支援的な役割も担っており、SCUから急性期一般病棟へ移動される患者さまのベッドが確保できないと、救急車で運ばれてくる脳卒中疑いの患者さまを受け入れられなくなるので、その調整は重要です。
カンファレンス後は、担当する患者さまの情報収集やバイタルサイン測定などを行い、さらに入浴介助やオムツ交換など体の清潔を保つためのケアも進めていきます。また、午前から午後にかけて、各患者さまに必要な検査が実施され、リハビリ専門職員による運動療法なども順次行われます。
ベッドからの移動が可能な患者さまの昼食は、リハビリを兼ねてデイルーム(共有スペース)で取っていただくようにしています。また、脳疾患などにより飲み込みが困難な患者さまを、食事の形態や食器・補助具などを検討して援助します。飲み込みに関しては言語聴覚士が専門的な評価を行い、その評価をもとに看護師を含む多職種のチームで対応しています。
そのほか、救急患者対応、看護計画の作成や評価など、さまざまな業務があります。近年は、同法人の日本語学校で言葉を学び、のちに介護スタッフを目指す生徒さんの実習を行っているので、看護師も指導役になります。実習生の皆さんはとても前向きで明るく、彼らを応援してくれる患者さまも多く、雰囲気が和みますね。
看護の質を保ち、患者さんの回復を促す
―そうなんですね。看護の際、大切にしていることはありますか?
患者さまのために「なんでもやってあげる」のは、良い看護ではないと考えています。看護師は、患者さまの回復を促すために親身になってサポートする立場。例えば、自分で食ベることができる患者さまであれば、食事を楽しんでいただけるように声をかけたり、食ベ方のアドバイスすることが大切ではないでしょうか。
また、コロナが5類に移行して、ご家族やご友人の面会が再開してから、患者さまの「退院して早く家に帰りたい」という気持ちが強くなっているように感じます。私たち医療従事者は、そんな患者さまとご家族の願いを、可能な限りかなえたいとも思っています。
―なるほど。印象に残っている出来事などはありますか?
―急性期一般病棟には、回復期リハビリテーション病棟や療養病棟よりも、若い患者さまが入院する機会があります。以前、脳神経外科の病気で入院している20代の患者さまがいて、コロナ禍で誰も面会できない時期だったこともあり、病状を心配するご両親から毎日お電話をいただいていました。
その患者さまは、関節が固まって体が動かせない「拘縮」という状態が続いていたのですが、リハビリを少しずつ進め、車いすに乗れる状態まで回復。まだお話しができなかったので、リハビリ担当者が車いすに乗っている患者さまの動画をご両親に送りました。その光景を、富士山がよく見えるデイルームで見て、私も救われるような気持ちになったのをよく覚えています。
時には、命と向き合ってみる
―誰にでも、入院せざるを得ない病気やケガをする可能性がありますよね。
―そうなのです。日々こちらで看護をしていると、若い方には難題かもしれないのですが、普段から「自分がどう生きていきたいのか」を考えてほしいなと感じるのです。特に高齢の方は「自分がどういう最期を迎えたいのか」を、雑談でもいいのでご家族や信頼できる方と話してみてください。
医療は「神」ではなく、現代の医学では治らない病気やケガも存在します。そういった厳しい状況に直面した時に、患者さま自身またはご家族が治療方針を選択することも。その方針に正解はないので、最終的にはご自身の望む「生きかた」が重要になります。患者さまの気持ちが揺らぐ時に私たち看護師が寄り添い、支援していきたいと思います。
―大切なことですね。本日はありがとうございました。
2023年6月、圏央所沢病院にて。